深い内容がちりばめられている『ペンギン・ハイウエイ』の感想や見どころ

森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』の映画を観ました。森見さんの小説はいくつか読んだことがあり、その独特の言い回しや不思議な世界、真面目で、突っ込みどころ満載の個性ある登場人物が好きです。

今回の映画は、そんな森見ワールドをちゃんと実写化しつつも、ファンタジー要素も強くて見やすい作品でした。

個人的には、他の森見作品がアニメ化されたよりも見やすく面白かったです。いくつかの見どころを説明していきますね。

簡単なあらすじ

小学4年生のアオヤマ君という少年が主人公です。

ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。

だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。・・・・

一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりもえらくなる。たとえばぼくが大人になるまでは、・・・三千と八百八十八日かかることがわかった。そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。

『ペンギン・ハイウェイ』より

と、自分のことを客観的に自画自賛しているのが、なんとも可愛らしいキャラクターだなと思います。この少年が、街中でペンギンを見つけ、その謎を解き明かすために研究を始めるところから話ははじまります。

そして、アオヤマ君のチェスの先生でもある、歯科医院の“お姉さん”。ある日、アオヤマ君はお姉さんが投げたコーラの缶がペンギンに変身するところを目撃します。果たしてペンギンとお姉さんの関係とは?森の中にある「海」という謎の物体とお姉さんとの関係は?というストーリーです。

見どころ①お父さんの教え 

アオヤマ君のお父さんが、これまた賢い人で、アオヤマ君はお父さんからの教えを元に、ペンギンとお姉さん、海の関係などを解き明かしていきます。

「問題解決の考え方」
・問題を分けて小さくする
・問題を見る角度を変える
・似ている問題を捜す
「問題が何かをよく知る」
「複数の問題は一つの問題かもしれない」

この考え方は、何か物事を分析するときに基本となる考え方で、それを実践していきながら、謎を解いていくアオヤマ君の過程が面白く描かれています。

見どころ②アオヤマ君のお姉さんへの心情の変化

アオヤマ君は、全ての物事を客観的に分析する子なので、癇癪を起こしたり、ジャイアン的な存在のスズキ君にいじめられても、どこか淡々としています。

例えば、スズキ君に自動販売機に縛られしまい、友だちのウチダ君がアオヤマ君を置いて逃げてしまっても「あれはかしこい判断だった」と言う、どこか俯瞰した考えの少年です。

そんな少年が唯一心を動かされたのが、歯科医院のお姉さんなんですよね。


ぼくはなぜお姉さんの顔をじっと見ているとうれしい感じがするのだろうか。そして、ぼくがうれしく思うお姉さんの顔がなぜ遺伝子によって何もかも完璧に作られて今そこにあるのだろう、ということがぼくは知りたかったのである

お姉さんとお母さんのおっぱいの違いなども、研究していて(笑)

それが「恋心」だとアオヤマ君が気づいた時、一つ大人に成長した過程をみたようで感動的でした。

見どころ③ちりばめられている哲学的な問い

アオヤマ君の妹が、ふと「死」について考えて夜中に泣いてしまうシーンや、お姉さんがアオヤマ君に「私はなぜ生まれてきたのだろう」と問うシーン。

子どもの頃なら、一度は疑問に思った哲学的な問いについて、映画を通じて考えさせられます。

私も、「死」について夜中に子ども頃に考えていたら、恐ろしくなって途中で考えるのを辞めた記憶があります。それだけ、子どもの頃に考えていたことって、残っているんだなぁとも思いました。

見どころ④相対性理論とお姉さん

冒頭で、アオヤマ君が『相対性理論』を読んでいるというのが一つのポイントで、お姉さんも『鏡の国のアリス』を読んでいることからも、

お姉さん=別の世界から来た「アリス」的な人物

だということが判明します。

そして、物語が進むにつれて、街が「海=ブラックホールのようなもの」に覆われていくという事件も発生します。

街を救うには「お姉さん」が必要で、「海」が消えてしまうことで、お姉さんもいずれ消えてしまうのではないかということにアオヤマ君は気づいてしまいます。

お姉さんは、この世界の住人ではないのですから。

皆さんは『多世界解釈』という言葉をご存知でしょうか?簡単に言うと、量子力学の解釈の一つで

この世界と異なるたくさんの世界が存在する

という考えです。そしてその世界は、重なり合って存在しています。

「海」は別の世界とを結ぶ窓のような役割として存在していて、本来はあってはいけないバグによって、アオヤマ君たちが住む世界に影響が出てきてしまっているんですね。

こうした視点を踏まえて映画を観ると、更に面白いと思います。

まとめ

哲学的な問い、量子論などが好きな人は、この作品の深さを感じるのではないでしょうか。ラストは切ない気持ちにもなりましたが。


もう一度お姉さんに会うことができるとぼくは信じるものだ。これは仮説ではない、個人的な信念である。

とアオヤマ君が言っているように、お姉さんは他の世界では生きているという確信があり。そしていつかは会えると信じながら日常に戻るところで終わります。

量子の世界で見るならば、お姉さんはどこにもいないけれども、どこにでもいる状態なのだとも言えます。それは、私たちにも言えることで、亡くなった人も、会えない人でも、想いを馳せることで一瞬で会うことができる。

DNA心理学でいつも人に伝えていることでもありますが、色々繋がって面白い作品でした!

この記事を書いた人

hiromi

日本人に一番多いD4グループ(アジア系・弥生)

仕事で外国人と一緒に働くことが多く、異文化理解も専攻していたので、そうした視点から夫を観察していきます。

一般社団法人DNAカウンセリング普及協会福島支部の代表としてルーツDNAやDNA心理学の普及活動をしています♡